阪神大震災を乗り越えた「仁川台の住まい」
今回は、宝塚市仁川台にある築45年の木造住宅を全面リノベーションしたプロジェクトについてご紹介します。この住まいは、阪神大震災を経験した家で、老朽化と耐震性の問題がありましたが、住まい手が両親から受け継いだ大切な家を、新たに家族が安心して住めるようにリノベーションを行いました。
1. リノベーションの背景と計画
この住宅は、阪急今津線から少し山側に入った静かな住宅街に位置しています。古い家であったため、耐震改修を含めた全面的な改修が必要でした。特に、耐震性については、最初の現地調査で東西に傾き、基礎が割れていることが確認されました。
改修工事では、限られた予算内で最大限の効果を出すため、外壁側の大きな工事は避け、内部から構造用合板を貼ることで耐震性を向上。さらに、建物内部から鉄筋コンクリートのべた基礎を新設し、既存基礎を補強することで、建築基準法の1.3倍の耐震性能を実現しました。
加えて、行政の耐震改修補助金制度を利用し、100万円の補助を受けることができたのも大きなポイントです。
2. デザインの工夫と家族構成に合わせた設計
この家には、夫婦と3人の元気な男の子、そして長期滞在する祖父母の計6人が住む予定です。限られたスペースを最大限に活かし、子供たちが自由に動き回れる広い空間を確保しつつ、個室は最小限に抑えた設計がなされました。
設計の際、住まい手の「古いものにも愛着がある」という要望を大切にし、既存の木製建具を再利用して、内装には障子などを取り入れました。外観も大きく変えすぎることなく、元の良さを活かしつつも、新しい要素を加え、古さと新しさが絶妙に融合したデザインに仕上げています。
3. 使用素材と断熱対策
リノベーションでは、素材選びも重要なポイントです。この家の屋根は既存の瓦葺きをそのまま利用し、外壁はサッシ周りの補修を行った後、断熱塗料「ガイア」を吹き付けることで性能を向上させました。
内部の床はパインフローリングで仕上げ、壁には和紙クロスを使用。天井は杉板を貼り、自然素材を取り入れた温かみのある空間が広がります。断熱材については、天井部分に高性能グラスウールを使用し、快適な室内環境を保つ工夫がされています。
4. まとめ
「仁川台の住まい」は、築45年という古い家ながらも、耐震性を強化し、家族が安心して暮らせる住まいに生まれ変わりました。古いものへの愛着を大切にしながらも、現代の生活に合わせた快適で機能的な空間を実現したこのプロジェクトは、リノベーションの可能性を示してくれる好例です。
所在地: 宝塚市仁川台
家族構成: 夫婦+子供3人
構造: 木造2階建て
敷地面積: 295.25㎡
延床面積: 119.18㎡